以下は6月18日の記者発表でJR東海より出された建設費などのデータである。
| 木曽谷ルート | 伊那谷ルート | 南アルプスルート | ||
| 路線の長さ | 334km | 346km | 286km | |
| 所要時分 ※最速達タイプ |
超電導リニア | 46分 | 47分 | 40分 |
| 在来型新幹線 | 87分 | 90分 | 79分 | |
| 工事費 (建設費+車両費) ※中間駅除く |
超電導リニア | 56,300億円 | 57,400億円 | 51,000億円 |
| 在来型新幹線 | 44,500億円 | 45,000億円 | 41,800億円 | |
もともとこのリニア新幹線は、飽和状態にある東海道新幹線の補完かつ発展となる交通機関である。従って、東京〜名古屋〜大阪を直結するのが主目的であるのは言うまでもない。だからできるだけ直線ルートにするのが理にかなっている。途中駅は、言ってみれば、通過されるだけでは納得しない地元への見返りである。通過されるだけの地元にすれば釈然としないだろうが、ここは日本全体のことを考えなければならない。
一県一駅は、まさに地元説得の道具であろう。正直、このルートであれば、神奈川県と岐阜県には駅がなくても、と思うが、通過する各県に、建設に協力してもらうために、JR東海は早々と一県一駅を発表したのであろう。なかなか賢い。
(余談だが、私は最初、神奈川県と聞いて、相模湖と藤野の2駅しかない中央本線を思い浮かべたので、そんな所にも駅を作るのか、と思ってしまった。だが、リニアのルートはもっと南で、橋本駅あたりが有力候補地らしい。それなら、東海道新幹線の新横浜に準じた利用客を集められるので、むしろあった方がプラスだろう。やはり"首都圏恐るべし"である。橋本なら岐阜東濃の新駅の何倍もの乗降客数になるだろう。)
さて、問題の長野県である。インターネットで様々な検索をする限り、この件に関しての村井仁知事の評判はめちゃくちゃ悪く、支持者は本当に僅かのようだ。長野県民でさえ、長野の恥などと言う始末で、気の毒なぐらいである。確かに一人で駄々をこねて建設を遅らせる結果を招くのはよろしくないが、しかし、長野県知事の立場としては、わが県のために簡単に認めるわけにはいかない、というのもわかる。恐らく村井知事も、内心では駄目だと半ば諦めているのだと思う。しかしそれをあっさりと表に出すわけにはいかないので、嫌われること、馬鹿にされることを承知で頑張っていらっしゃるのではないか。そして、時間をかけて妥協に持っていく見返りに「それなら南アルプスルートを認める代わりに」と、例えば中央本線高速化とか、何かを求めるという戦略ではないか、と思うに至ったのだが、どうだろうか。
ただ、村井知事や長野県を批判する様々な意見の中には、的外れなものも多いと思う。私も、諏訪地区へ迂回してそこへ駅を作れ、という意見には絶対反対である。しかし、だからといって、これはどうであろう?
<その1>諏訪地区に駅など作っても利用者は殆どいない。
→ さすがにそんな事はないだろう。今も中央線の特急が1時間に1本の割で運転されており、茅野と上諏訪の2駅には全列車が停車している。時間短縮によって諏訪地区への企業立地や旅行者が増えるなどの需要喚起もあるだろうから、そこそこの利用者は見込めると思う。少なくとも諏訪地区は、将来の開発を見越して先に駅を作った開通初期の岐阜羽島や安中榛名などとは状況が違う。
<その2>長野県にはもう新幹線があるではないか。
→ この意見を言う人は、長野県の地理的状況(広さ・細長さ)を知らないのかと思う。そもそも新幹線というものは、一つの県に一つずつあれば良いというものではない。現在の長野新幹線が通っている地域と諏訪・松本等の中信は違う。確かに長野新幹線の開通によって、松本あたりだと、東京へ出るのに長野経由という選択肢ができたことはできたが、だから中信には高速鉄道は永遠に不要だということにはならない。
まあ、しかし個人的には東京〜名古屋を40分にまで縮める必要があるのかとは思う。だが、やる以上は1分でも短縮すべきであろうし、そこに諏訪などを迂回するために6〜7分も余計にかかるようなものを作っては、やはり将来に禍根を残すことは間違いないだろう。
中信といえば、中央本線が大八回りなどと呼ばれる辰野経由で作られて、長いこと、特急も急行も、諏訪と塩尻の間をぐるりと大回りしていた。その当時の辰野は、急行は全て停車したが、特急は通過も多かったように記憶している。それも塩嶺トンネル経由の短絡線(みどり湖経由)が出来て昔語りになったが、辰野には伊藤大八の銅像もあるという。今度、もしも万が一、リニアのルートが諏訪経由ルートに決まれば、諏訪地区新駅の駅前に村井知事の銅像ができるのであろう。そして、この不自然にカーヴした路線のことを、ジン回りなどと呼ばれることに・・・と、まあこの辺でやめにしておきましょう。



リニア路線問題を取り上げたブログのほとんどは長野県(知事・県庁・住民)を叩くだけで、感情的なありさまはそれこそ「何がなんでもBルート」と叫ぶ人たちの鏡写しです。
悪名高い「大八回り」にしても、建設当時の技術的な問題や経費・建設期間を考えるとやむをえなかったという説があります(Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%A4%AE%E6%9C%AC%E7%B7%9A#.E5.A4.A7.E5.85.AB.E5.BB.BB.E3.82.8A )。リニア中央新幹線だってアルプス縦貫トンネルが工事困難で結局Bルートになる、という可能性もゼロではないでしょう。別にそれを期待しているわけではありませんが。
「むきだしの地域エゴ」も「地域エゴは黙れというヒステリー」もうんざりです。野次馬の騒ぎはうるさいだけで役に立ちません。関係者と専門家が冷静に考え落ち着いて話し合えばそのうち妥当なところに落ち着くはずです。