2009年12月19日

茨城空港

計画や需要予測がずさんだったのも事実だが、それにしてもタイミングが悪い時期に開港するものだと思う。2010年3月に、国内線就航ゼロという状態で開港する茨城空港(現・百里基地)である。何しろ定期便は一日1便のソウル(仁川)行きだけだというのだから、話にならない。どんなみじめな開港記念式典になるのかと心配になる。

私は個人的には、この空港は、首都圏第三空港としての可能性がなくはないと思う。そういう意味では、静岡や福島よりは、まだやりようがあるのではないか。静岡と福島の中途半端な立地は、首都圏第三空港としては、もはや使えない。茨城も東京を名乗るにはちょっと遠すぎるものの、ギリギリ可能性がある気がする。

欧州で言うと、パリの第三空港であるボヴェ、フランクフルトを名乗るハーン、そしてブリュッセル南を名乗るシャルルロワ、といったあたりが、相当すると思う。いずれも欧州の人には知られている、格安航空会社専用といっていいような空港である。どこも鉄道の連絡などはない。車で来る人が多いようだが、一応連絡バスもある。例えばパリのボヴェは、パリ市内までバスで1時間半だそうである。一般の路線バスではなく、格安航空会社の専用バスのような感じらしい。バス代も、1時間半も乗る割には安い。時間はかかるけれども、とにかく安くパリに行ける。そういう需要をしっかりつかんでいる。忙しいビジネスマンは、当然シャルルドゴールを使うが、そこはおのずと住み分けができている感じである。さらには、航空運賃がここまで安いと、それが新たな需要を生み出す。しばらく旅行していないからどこか行こうかと思って、格安航空会社のサイトを検索する。往復とも安くて都合のいい便が取れる。ならちょっとパリにでも行ってくるか、ということになる。かくして格安でも搭乗率が良いから、格安航空会社の業績は、大手よりもむしろ良い。空港もそこそこの利用者で活気がある。

全てがそのようにうまく行っているわけではない。しかし、欧州ではそういう成功例がいくつもある。東京ほどの都市だ。やりようによって、できないことはないと思う。

しかしこの空港は、スタートであまりに大きくつまづいてしまっている。未曾有の不景気にインフルエンザが加わり、旅行需要自体が大きく減退している。しかもJALが倒産同然の騒ぎの最中で、新路線どころではない。加えて羽田と成田の拡張が進みつつあり、航空会社もそちらへの路線確保が最優先事項だ。そうなると、茨城など眼中にもない。これが10年前だったら、多分違っていただろう。当時はまだ、地方空港への新路線開設も盛んであったし、羽田や成田は枠がいっぱいで、これ以上便数を増やしたくても増やせなかった。そういう時に開港すれば、とりあえずいくつかの路線は飛んだかもしれない。茨城というと、外から大々的に人を集められる観光地はないが、つくばや日立などがあり、ビジネス需要も見込めるだろう。

この空港の建設を肯定するわけではないが、運が悪かったという面もあると思う。計画から開業までの時間が長くかかる交通施設は、作っている間に世間の状況が変わってしまうから大変だ。青函トンネルなどもそうだし、陸上でも、お金をかけてトンネルを掘ったり橋を作ったりして、結局鉄道が走らずに終わった路線などもいくつもある。それらが、ずさんな需要予測や政治的かけひきの道具として使われた結果という側面もあるが、全てがそうでもないだろう。

茨城空港に関して言えば、微妙なところだが、欧州の幾多の例を見る限り、何とかやりようもあるように思える。しかし、とりあえず開港時にこのありさまでは、悪いイメージが定着してしまい、今後の発展も厳しいかもしれない。2〜3年で撤退路線が出てくるとしても、とりあえず開港時にそこそこの路線が飛んでくれていれば、空港アクセスのバス路線なども色々と開設されるだろう。しかし、1日1便では、バスなどどうするのだろうか。バスの便もない空港ということで、利用しづらい空港という印象が定着してしまうと、さらなる路線誘致にも影響してくるだろう。最初はやはり肝心だ。そういう意味では最悪な時期に開港する、不運な空港である。
posted by 東西高低 at 08:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 空港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月22日

静岡空港開港2週間

静岡空港が開港して2週間。ここは建設反対や批判が非常に多かったし、早く廃港にという真剣な意見も今なお根強く、何かと物議をかもし出している空港である。

これが他の先進国の場合、静岡ぐらいの人口や産業の集積があれば、空港の一つぐらいあってもおかしくはない。例えば空港密度の高い国の一つ、イギリスならば、間違いなく空港の一つぐらい存在する。しかし、静岡の実情を見ると、イギリスと違って空港経営はかなり厳しいものがあるようだ。そういうきわどい所で無理やり作った空港であるから、税金の無駄遣いという面でも環境保護の面でも、そして総合的な交通政策という観点からも、多くの批判を浴びることになっている。

イギリスで静岡規模の都市の空港が十分に機能する一番の理由は、国際線需要が高いことだろう。そして二番目の理由は、飛行機に乗ることに対する敷居が低いこと、これは運賃が安いことも含まれる。イギリスに限らず、欧州は格安航空会社が非常に発達している。あそこまで安いと、それが相当数の新たな需要を作り出す。しかもEU統合のおかげもあって、国境の垣根が低く、彼らは日本の国内旅行並みの感覚で、気軽に外国に出かける。そういう土地柄であれば、静岡ほどの人口があれば、空港は十分に機能する。加えてイギリスには新幹線ほどの高速鉄道が無い。

単純な数値の比較でどうこう判断するのは危険だが、参考までに筆者が調べたデータを挙げると、グレートブリテン島と本州は、面積が大体同じであり、空港数もほぼ同じという面白い結果がある(グレートブリテン33空港、本州34空港)。対する人口は、本州が1億をちょっと上回っているのに対して、イギリスのうちグレートブリテン島の人口は、5800万人ぐらいと思われる。この数字だけを見る限り、日本に不当に空港が多いとは言えない。

日本の場合、経営的に空港が成り立つ条件は、まず、東京(羽田)便の需要が高い所。次が大阪(伊丹)。あとは名古屋、福岡、千歳あたり。静岡はこれらのうち、東京・名古屋・大阪のどこにも飛ばせない。この点では、廃港の恐れが見え始めている福島空港よりも状況は悪い。札幌や福岡は、大都市ではあるが、北海道と九州という中央から遠い地域であり、需要は限られたものになる。わかりやすく言うと、東京〜大阪間(最大の人口集積地という意味で日本の中心帯)に住んでいる人のうち、北海道や九州に本当に用事があって出かける人がどのぐらいの割合でいるか、ということである。恐らくそう高くはあるまい。

海外となると、必要あって飛ぶ人は、さらに限られてくるし、観光旅行需要もまだまだ限定的だ。ここが日本とイギリスの違う大きな点だ。日本の場合、距離的に近い海外がより身近とは限らない。仕事ならともかく、観光で海外に行くなら欧米先進国しか頭にない、という人も未だに相当数いる。しかし、欧米のように遠い地域だと、成田や関空などの主要国際空港以外から飛ばすことには現実性が無い。だから地方空港の国際線の主役は、韓国線や中国線というのは、どこも同じである。しかも日本の航空会社にはそんな体力がなく、相手国頼みである。実際、静岡に来ている国際線も、韓国と中国である。ビジネスや用務の需要も多少はあるだろうが、観光需要を積極的に作り出さないと定期便を維持するだけの乗客数は確保できないだろうというのは、素人でも想像がつく。

さて、本題の静岡空港。新聞その他の記事を検索してみたのだが、開港4日目の発表データと、開港1週間の記事は結構見つかった。しかし開港2週間の今、その後の搭乗率などがどうなのか、ネットで検索する限り、続報が無い。もう開港ブームの騒ぎも落ち着いてニュースにすらならなくなってしまったのだろうか?しかし開港から1週間というのは特殊な時期であり、その1週間の搭乗率をもってどうこう議論しても、あまり意味がないと思う。それは2週間や3週間でも大同小異で、ある程度は長い目で見ないといけないとは思うが、それでも少なくとも開港初日を含む最初の数日のデータは特殊なデータと思った方がいいだろう。ただ、鉄道の開業などは、マニアに限らず、とりあえず乗ってみようという一般市民などで最初の数日は大きな数字を出すが、飛行機となれば、開港したからといって気軽に乗ってみようとはいかない。だから、2週目ぐらいのデータを見ると、結構先が読めるのではないかと思う。

とりあえず、開港1週間のデータで、肝心の福岡線が67%と、目標の70%を下回ったそうだが、もしこの数字が今後も維持できるのならば、私の感想としては、思ったほどは悪くない。福岡線はビジネス需要が主、とはいえ、オフシーズンの6月であり、しかも今年は不景気にインフルエンザなどで、普通の路線でも旅客数が減っている。それで67%なら、普通の年なら70%が出せたのではないか。県庁のお役人や建設業界の人達などが、数字を出すために無理に用事を作って乗っているとすれば話は別だが・・・

福岡線の目標70%というのは、報道で大きく伝えられているように、JALとの間に搭乗率保証制度があるからだ。この制度は、つまるところ、乗客が少なければ県がJALに損失分のお金を出すから、運航を続けてくれ、という話である。そうまでして路線維持をする意味があるのか。私が静岡県民であれば、そんな事に税金が使われることには断固反対である。勿論、同様に思っている県民は非常に多いそうだ。当然であろう。だが、県のお役人は、これは万が一のための保険のようなもので、70%は問題なく達すると考えていたらしい。だから、こんな時期の開港であろうと、67%には危機感を持つわけで、それが報道の目玉の一つにもなっている。

以上、空港に好意的な事も多少は書いたものの、私自身は静岡空港は不要だったと思っている。仮にこれから建設するとして、賛成か反対かと問われれば、間違いなく大反対だ。しかし、できてしまったものは仕方ない。そこで、今後の静岡空港の行方だが、厳しいには違いないと思う。比較で言うと、福島空港がいい勝負だろう。首都圏に近い点、新幹線と競合する点、空港アクセスが悪い点などが、そっくりだ。福島の方に強みがあるのは、大阪便の需要がある点で、そのマイナスを静岡は何で補うかというと、福島には悪いが、福島よりは、内外の観光客の入り込みがいくらか見込める点だろうか。何しろ富士山静岡空港である。これは、韓国や中国の観光客を呼び込める売り文句である。その点、福島は、全体的には良い所だと思うが、決め手がない。というわけで、私の予想としては、中期的には福島空港と似たような状況が続くのではないかと思う。

心配なのは、まず、フジドリームエアラインズ。静岡拠点にローカル線だけを運航する新しい航空会社だそうで、7月から飛ぶそうだ。しかし、ヨーロッパでは、この手の航空会社は大半が数年で破綻している。ヨーロッパでは一時期、一部格安航空会社の成功に刺激されてか、小規模で地域特化したローカル航空会社がかなりできたが、結局、ナショナルフラッグキャリアと格安大手が生き残り、他はかなり淘汰されてしまった。

次は、これはずっと先だが、リニア中央新幹線が開業すると、静岡空港は厳しくなるだろう。リニア開通で余裕の生まれる東海道新幹線では、「のぞみ」レベルの速いクラスの列車の静岡停車が大幅に増えるに違いない。今の「のぞみ」+静岡だけ停車、みたいな列車もできるかもしれない。現在、新幹線で静岡から岡山より西に行こうとすると、乗換えが必須で、乗り継ぎも必ずしも良くないので、結構時間がかかる。

「のぞみ」の1時間に1本だけの静岡停車は、リニア開通を待たずにやってもいいかもしれない。それは、搭乗率保証をしているJALの福岡便を廃止に追いやるかもしれない。もっとも静岡県はこれまでさんざん、のぞみ停車を要望していたが、JR東海が断固として受け入れなかった。空港ができた今になってそんな事をしたら、静岡県をますます怒らせるだろう。しかしできるのならばやってみたらと思う。山陽区間で一番停車駅が少ないタイプの「のぞみ」を選んで、1時間に1本、静岡だけ追加で停める。これは絶対に浜松など他の駅に広げてはいけない。案外、のぞみがN700系に統一される時期には実施しようと、JR東海が既に内部検討していたりしないだろうか・・・
ラベル:静岡空港 新幹線
posted by 東西高低 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(1) | 空港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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